「本番に緊張する」メカニズムについて考えてみました~アンカーとトリガーのお話~
先日久しぶりにちゃんとしたライブに出演しまして、いろいろと思うところがあったのでこちらでも共有できればと思い今回は「ライブ本番」をテーマに書いてみようかと思います。
よく、「本番は練習の力の○○%しか発揮できない」なんて言われていますがこの事象の正体はいったい何なのかといろいろ考えてみました。
「それはお客さんがたくさん見ているから」というのが当たり前のような気もしますが、果たして本当にそうなのでしょうか?
もちろん、人によっては「人前であがりやすい」人というのがいることは事実だと思います。(それが生まれつきなのか、環境でそうなったのかはわかりませんが)、しかし、私個人のことでいえば昔からそんなに人前で緊張する方ではありませんでした。(昔から人見知りではあるのですがこればかりはいくつになっても治りません笑)
しかし、やはりリハーサルスタジオで完璧にできてもライブハウスのリハーサルを開始すると「何か違う!!」という事態に見舞われるのです。
そしてどうやらこれは緊張だけではないと思います。
じゃぁ何なのか?というと、前回の記事でも少々触れましたがそれは「空気感の違い」つまり「五感が受け取る刺激の違い」です。
ドラムに限らずですが、楽器の演奏は非常に繊細なものなので、「空気の違い」に順応できないと見事に普段の調子がでません。
以前も少し取り上げましたがNLPという学問の分野では、
「アンカー」と「トリガー」という概念があります。(ご存じ(?)のとおり、NLPはミルトン・エリクソンという心理療法家の催眠をベースにしています)
催眠について門外漢の私が説明するのもはばかられますが、「アンカー」は「ある心理状態」であり、それを引き出す刺激が「トリガー」ということになります。
よく引き合いに出されるのが、イチロー選手が打席に入る前の「一連の決まった動作」ですね。ここでは、「トリガー」が、「打席に入る前の一連の動き」、「アンカー」が「ヒット(もしくはホームラン)」といわれています。
つまり、「ヒット(ホームラン)」という良いパフォーマンスであるところの「アンカー」を常に出せるように毎回「トリガー」に当たる決まった動作を打席に入るときにしているわけなのです。
ではこれをドラムに置き換えてみると、「アンカー」は「リハーサル通りの演奏」でしょうか。(前も書きましたが、練習をしなければそもそも上手くはなりません笑)。「トリガー」に関してはまあそれぞれ人によって知らず知らずに何かやっているかもしれませんが、ここで書きたいのは、「トリガー」が「リハーサルスタジオの環境から受ける五感の刺激」となっている場合、そのことに気が付かないと本番で緊張したり力んだりする危険があるのではということです。
つまり、いつも使っているリハーサルスタジオでいい演奏ができた時には、「快」の感情が刷り込まれるわけなのですが、そのときにいた環境の状態も同時に刷り込まれている可能性があるということなのです。
では、「リハーサルスタジオの環境から受ける五感の刺激」とは具体的になんでしょうか?
それを下記にリストアップします。
・視覚:これは「照明」です。リハーサルスタジオの段階でライブハウスを想定して照明を暗くしていても、ライブハウスの照明は点滅したり、ドラムを照らしたりして逆にまぶしいのでまずこれでいつもの勘が鈍ります。
・嗅覚:最近は分煙のスタジオが増えてきたのでそれに慣れていると、ライブハウスの煙草のにおいや、あとはドライアイスのにおいなどですね。これにいつもの調子が乱されます。
・聴覚:基本的にライブハウスのドラム横のモニターの聴こえ方はスタジオのそれとは違うことが多いです。(昔打ち込みと同期していたバンドの時はイヤホンをしていたので特に気にしなかったのですが)。あとは、お客さんが入るとお客さんに出音が吸収されるので、「あれ?自分のパワー落ちたかな?」という感覚になることもあります
・触覚:これは先ほどのドライアイスのせいか、鼻と喉の間が妙に乾燥します。
・味覚:これはないですね笑
とざっと書いてみるとこんな感じでしょうか。とはいえ、リハーサルスタジオとの環境の違いは自分ではどうすることもできません。なのでどうすればいいか?という話なんですが、
「本番当日はなるべく外にでない」
ということでしょうか。これはつまり本番当日はライブハウスの中にずっといることでそのライブハウスの「空気感」に身体を鳴らしていくということですね。
本番までの待ち時間ついつい暇をして気分転換に近所のカフェに…という気持ちになってしまいますが、
頻繁に音楽活動していて、月に何本もライブをやっていないとこの感覚のズレは結構気にすべきことかなと思うので、原始的な方法ですが、このようにして解消していくのがいいかと思います。
というわけで今回は一話完結で。
ではでは。