ドラムが上達している過程で起きているメカニズム…「注意資源」と「チャンキング」とは?

はじめに
今回もドラムのお話。
テーマはちょっとマニアックな…「ドラムが上手くなる過程で何か起きているか?」です。
つまり、ドラムは適切な練習を繰り返えせばうまくなっていくわけですが、その過程でドラマーの中で起きているメカニズムを知っておけばいいのではないかと思いまして。
なぜかというと、ある程度ドラムが叩ける(ここでいうある程度とは、ポップスなどの歌モノを一通りなぞって叩けるくらいのレベルとします)ようになると…そこから先になにをすればいいかというと、自分で練習メニューを作っていかないといけなくなるわけです。
つまり具体的に言えば、「ピンポイントでこの曲が叩きたいけど叩けない…でもどうしたらいいんだろう?」みたいな感じですね。教則本などの内容は一般化された内容なので、このようにオーダーメイドの練習メニューを作る能力もゆくゆくは大事になってくるわけですね。
そんな時の参考になればと思い、今回は「注意資源」「チャンキング」という二つのキーワードから考えてみたいと思います。尚、これはドラム以外の他の楽器にも応用できるかと思うのでドラマー以外にも参考になればと。では本題に。
注意資源とは?
まずは注意資源の話。これは簡単にいうと、「人間は注意を向けられる総量には限りがある」というもの。これはよく車の運転で例えられます。(私は無免許なので違ってたらすいません前提で説明しますが)
車を運転するときはその動作をリストアップすると実に一度のことをたくさんやっています。なので教習所で初めて運転するときは「こんなにいろんなことしないとダメなの?」となるらしいですが。
運転に慣れてくるとそれが自然にできるようになるそうです。これは、運転に慣れてくると、向けられる注意の数が増えたのではなくて、注意を向けなくて済むほどに無意識的にできるようになったということです。
これをドラムに例えると、「最初はこのタイミングでバスドラムを踏んで、スネアはここで叩いて、骨盤を起こして、手の指はこの形で…」とこちらも運転に負けず劣らず大変です。
つまりご察しのいい方は気付いていると思いますが、ドラムも上達してくると無意識的にできることが増えてくるわけです。無意識的にできることが増えてくると基礎的なことに注意を向ける必要がなくなってきます。
この現象が「ドラムが上手くなっている」ということの一つなわけです。
チャンキングとは?
というわけで、注意資源の理屈で考えると、注意を向ける先の数を減らせばいいわけです。
これって言い換えると、いくつかの注意をひとかたまりにまとめてしまえばいいわけです。その「まとめる力」をチャンキングといいます。
チャンクというのは聴きなれない言葉ですが、パターンを認識する塊のことです。
例えば鎌倉幕府の語呂合わせって、1192(良い国)ですけど、これはもともとは4つの数字(4チャンク)を無理やり意味を持たせて「良い国」という1チャンクにした例ですね。
あとは、早口言葉でおなじみの「東京特許許可局」なんかも、「東京」「特許」「許可局」と3チャンクで認識しているといえます。
これをドラムに例えると…エイトビートを覚えたての人はたった1小節のエイトビートも、3〜4チャンクになっています。つまり、「ハイハットは8回たたいて、スネアは2回たたいて、バスドラは1回踏んで…」みたいな感じですね。
これが慣れてくるとエイトビート全体を1チャンクとしてとらえられるようになっています。
おわりに
というわけで今回は具体的な解決策は書きませんでしたが、例えば「新しい曲が叩きたい!でも叩けない…」なんてときは、チャンキングをして注意資源を減らすということを目標に練習メニューを作っていくといいかなと。
多分究極的には、音符の演奏に対する注意資源は完全にゼロにして、演奏の表現力にのみ注意資源を注げている状態が理想ではあるんですけど…これが常に完璧にできる人のことを名手と呼ぶのでしょう。
なので日々の練習とはそこに到達するための延々の道のりなのでしょう笑。
ではでは。