グルーヴのないリズム~YMOの動画より学ぶ~

今回もリズムの総論的なお話。
前回の記事でオフビートについて書きましたが、よく言われることとして、極端にいえば演奏を活かすも殺すも休符次第なんて話はよく聞きます。
というのも人間は機械ではないので完全にずれのないリズムを打ち出すのは物理的に不可能です。
しかしそこに生まれる、ズレが聞いていて心地良い演奏になるわけですね。これがグルーヴの正体というか要素でもあるわけです。
じゃあ逆に完全にズレのないリズムは聴いていて心地よくないのか?という話から、打ち込みドラムの黎明期に試行錯誤が繰り返されたというエピソードが聞けるのがこの動画。
ご存知YMOのお三方が演奏も交えつつリズムについて説明しています。
www.youtube.comぶっちゃけて言えば見ていただければ内容はわかりますが、動画を見づらい方もいるかもしれないし、自分の考えを整理するためにも要点を文字に起こしてみました。以下要点です。
- YMO結成当初はズレのない打ち込みのドラムを使っていた(当時は打ち込み自体の前例がとても少なかったので、これじたいが新鮮な試みだった)
- しかし次第に飽きてきて、ずれのある打ち込みのリズムを追求するようになってきた。
- そこで8分音符を12分割して(つまり当時、1970年代あたりは8分音符の12分割が上限だったらしい)、いろいろなジャンル(沖縄音楽、ニューオリンズジャズ、等)の音楽のズレの比率を調べ始めた。
- 例えば沖縄の音楽の「ハイサイおじさん(いわゆる”変なおじさん”の原曲ですね)」のリズムは12:12がジャストな8分音符とするならば、14:10ということがわかった。
- 私による補足:「跳ねるリズム」の代表格ともいえるシャッフルのリズムは三連符(トリプレット)で楽譜には表記されているので、8分音符の12分割でシャッフルのリズムをとると…16:8になるので(つまり、12+12=24で、この24を三連符の比率である2:1にわけるということ)、ハイサイおじさんはシャッフルよりもはねていないことがわかります。
- 更に試行錯誤を重ねていく中でリズムのグルーヴはズレだけではなく音色や音量でも変わることがわかった。
…ということらしいです。まぁこの辺の話は逆に、「ドラムは叩けないけど打ち込みでドラムのトラックを作ってる」人には周知のことかもしれませんが。
グルーヴってわりと経験とかフィーリングで語られることが多いので、自分のドラムのグルーブに悩んでいる人はこの辺の話は参考になるのではないでしょうか。
まぁ結局行き着くところは勘や経験にならざるえない部分はあるかと思いますが、グルーヴ理解の入り口としてはありかなと。
というわけで、以前スタジオラグさんのブログでもちょっと書きましたが、ドラムはハイハットかライドシンバルで高音を担うリズムを刻みます。
そしてポップスやロックなど8分音符でグルーブを出すタイプの音楽は、ライドシンバルよりハイハットかこのことを理解するのにはいいと思います。
というわけで今日のテーマに乗っかって多少荒っぽくそれぞれの楽器の特性を考えてみましょう。
①ハイハット
・タイミング:音の長さを調節できるのでズレのタイミングを作りやすい
・音量:調節できる
・音色:スティックの握り方で調節できる
②ライドシンバル
・タイミング:ハイハットに比べて音の長さを調節しにくい
・音量:備え付けのものだと鳴りすぎるものもある
・音色:スティックの握り方で調節できる
という具合でやはりハイハットの良さは「二枚のシンバルを合わせている」というその構造のために、いろいろ試せます。
というわけで今回は「打ち込みドラムのパイオニア達の試行錯誤のプロセス」から、ドラムのグルーヴについて考えてみました。
ではでは。