演奏の「個性」を出すには…音の「あいまいさ」を操ろう!

はじめに
今回はドラムのお話ではありますが楽器をやっている人、特に「リズム」の要素がある楽器をやっている人には参考になるのではないかと思います。
テーマは「あいまいさ」です。文字通り「あいまいさ」というのは「はっきりしない」ということですが、要するに音色でもリズムでも「はっきりしない」様な演奏のことですね。
これがなんで大切なのか?ということですが、実は「プロっぽい演奏」「うまい演奏」の秘訣がここにあったりするのです。
なので今回は「譜面通りにやってるんだけど、どうもうまく聴こえない」とか「説得力のある演奏をしたい」とか「個性的な演奏をしたい」とお悩み、つまりレベルでいうと中級以降のドラマーに向けてお話ししたいと。
ちなみにこれはドラマー以外にも応用できることだと思いますので、他の楽器プレイヤーの方にもご参考になれば幸いです。では本題に。
「あいまいさ」を意識して使えるようになろう
今回の結論としては「あいまいさ」を意識して使えるようになろうということです。
そしてこの「あいまいさ」というのは、「意図しないあいまいさ」と「意図するあいまいさ」があります。(ここがとても大事です!)
まずは初心者のうちは、メトロノームにきっちり合わせて「意図しないあいまいさ」をひたすら取り除くことを目指します。
後で書きますが、この「意図しないあいまいな部分」というのが下手に聴こえてしまう原因となっているわけですね。
ただこの「意図しないあいまいさ」が無くなってくる、つまり中級者以降になると…今度は「意図したあいまいさ」が出せるようにならないと、その上のレベルに行けないということなのです。
(ただ、例外として最初から最後まで全ての音をフルパワーで叩き切るようなハードロック系の歌伴のドラマーだけを目指すのならば気にしなくてもいいかも…でもそれもまれなケースかな)
ドラムの「あいまいさ」
というわけでドラムの場合についてのこの「あいまいさ」についてちょっとお話。
音楽というのはいわゆる縦線(一発一発の音)と横線(音の並び)という、2つの要素が組み合わさってできているので…それぞれに「あいまいさ」というものがあります。
①音色のあいまいさ
まず「音色のあいまいさ」ですが、これは素の打ち込みドラムなんかを浮かべてもらえると分かります。
機械というのは完全に正確な音を出しますからこんな感じで、すべて「あいまい」でない音だけだと「のっぺり」しているような、暑苦しいような、いわば「固い」イメージです。
なので、人間の「ドラマーならではの持ち味」を出すにはわざとあいまいな音を入れる必要があります。
その代表例としてゴーストノートと呼ばれたりしますが、その第一歩として…例えばスネアドラムとかで「打面をサラッとなでるだけ」の音を練習してみるといいですね。
②リズムのあいまいさ
次にリズムの「あいまいさ」です。これもさっきの打ち込みドラムを参考にしていただきたいのですが、完全に正確なリズムは聴いていて堅苦しい感じで…要は心地よくないんですね(まぁそれを逆手にとってつくる音楽もあるので例外もたくさんありますが)。
ただ「リズムをあいまいにしよう!」と言っても、四分音符の間隔であいまいにすると、さすがにリズムがよれて聴こえてしまいます。
ドラムの達人といわれる人たちは、とても細かい音符のなかで絶妙にリズムをずらす達人ともいえるのです。
この「ずらし」こそがリズムの「あいまいさ」なのですね。
なぜ曖昧さが必要なのか?
今回は演奏のあいまいさということで書いてますが、そもそもなんで「あいまいさ」が必要か?ということですね。
それは「人間は完全に同じ音やリズムを聴き続けていると飽きるから」なのではないかと。
つまりこれは前にも書きましたが、人間が自然を気持ちいいと感じるのって、自然というものがあいまいさの塊みたいなものだからですね。
風の音ひとつとっても、毎秒毎秒で違う音が聴こえてきますし、海の波でも絶えず形が変わっていく…これが演奏のあいまいさにも通じるのかなと思います。
達人クラスの演奏をみると、そこに「自然」がみえるのはそのため、つまり「自分で自然を作り出すこと」ができるのですね。
終わりに
というわけで、今回はこの「あいまいさ」についてのお話でした。
さらりと書きましたがこの「あいまいさ」というのは、めちゃくちゃ難しいです。ただ難しいがゆえにそれが「楽器の奥深さ」となります。
そしてさらに中級者以降で演奏に煮詰まるのはこの「あいまいさ」にうまく向き合えないからなのかな、とも思います。なのである意味修羅の道、とも言えるのですが…そこに挑戦したい人は歓迎します、ということですね笑。ではでは。