米津玄師「海の幽霊」のアレンジに見る「ミニマリズム」

はじめに
今回は「ミニマリストなドラマー」的音楽レビュー。
今回はご存知米津玄師氏の「海の幽霊」のドラムパートがとても興味深かったのでその特徴を書いてみたいと思います。
よく「音楽は引き算」と言われるように、音をギュギュっと詰め込むことよりも少ない音数で聴き手をを感動させる方が難しいのです。
なので、その辺のことに興味があるドラマーの方には何かお役にたつかもしれません。
では本題に。
「直列型」と「並列型」
まずこの曲のドラムトラックは「並列型」の構造を取っているようです。これは私が勝手に名前をつけましたがドラムが曲の中でとる役割は2種類あります。
それを説明する既存の言葉がないので勝手に電気回路になぞらえて「直列型」と「並列型」と名付けてみました。ではそれぞれをご説明してみましょう。
①直列型
いわゆる普通(?)の構造。つまりドラムが土台というか曲のエンジンとなり進んでいくタイプ。それなのでドラムだけすっぽりと抜けると曲としては土台がなくなるので成立しなくなります。
②並列型
これはドラムも、他のボーカルやギターなどと同じように存在している構造。なのでドラムがグイグイと曲を引っ張っている印象は薄いです。
この「海の幽霊」は後者の「並列型」という印象を受けます。
曲中でのドラムの使われ方
…ということを踏まえてこの曲のドラムトラックの面白いところをピックアップしていきます。
①AメロとBメロ
ハイハットらしき音が不思議なタイミングで入ってます。これはリズムを作っている感じというよりかは効果音のような役割を果たしていますね。
ただバスドラムとスネアドラムが拍の頭で入っているので曲の輪郭はどっしりと打ち出しています
②サビ
ライドシンバルでリズムを刻んでいますが、ほとんど4分音符しか鳴ってません。フィルインも入っていません。
このテンポだと「ライドシンバルは8分音符」みたいなセオリーを見事に打ち破っているところがなんとも心地よいです。
またドラムの音自体にもエフェクトはあまりかけていないところも、ドラムが前にグイグイと出ない「並列型」に聞こえるところかなと思います。
アレンジのミニマリズム
ドラム以外の部分をみても、この曲のアレンジは本当にすごい。
「音を詰め込んでいる感じがない」アレンジはともすると、間延びしたような感じになりがちですが合間合間にハイハットやシンセ(ストリングス)の細かい音符を入れることでメリハリがついています。
これぞ引き算の音楽であり、音楽のミニマリズム。
私はまだこの映画を見ていないので曲のコンセプト的な部分はわかりませんが、サビで主役なのが「ベース」になっていて(野太い「ブォーッツ」というシンセベースのような音)、これが海の波を表現しているのではないかと思われます。
終わりに
というわけでこの記事を書いた日は20回くらい聴いてしまうほどに引き込まれてしまいました。しかもこの曲カップリング曲だったんですね…凄まじい。
ドラムだけの話ではないですが、サビの途中に音がフッと無くなる部分も凄すぎますね…。気になった方は是非聴いて見てください。ではでは。